「……妙な話だな」
マルモから話を聞いたべヌスは、思わず顔を眉根を寄せる。 行方しれずとなっている調和者が自領の、しかも一介の巫女のもとに発現したのだから無理もない。 しかも、不吉な言葉を残して消え去ったなど、にわかに信じがたかった。 けれど、あのアウロラが嘘をつくはずがないことは、べヌスが一番良く知っている。 しかし。 ノクトは言い難い表情を浮かべ、マルモを見やり、一方のマルモはきまり悪そうに視線を逸らしている。 両者の間で、何かあった。 瞬間的にそう察したべヌスは、鹿爪らしい表情を浮かべ、一つ咳払いをしてから、ノクト、そしてマルモを順に見やった。 「な、何です?」 「どうかなさいましたか、兄上?」 マルモは大きく目を見開きながら、ノクトは落ち着き無く瞬きをしながらべヌスに問う。 嫌な沈黙が流れること、しばし。 先に音を上げたのは、マルモの方だった。 「……だめですね。あたしは主様にそんな目で見られちゃ、ヘビに睨まれたカエルですよ」 降参します、そう言ってマルモは大きく息をつく。 それから、即位式の折アウロラが見たという恐ろしい光景のことをべヌスに告げた。 卓に頬杖をついて聞き入っていたべヌスだが、聞き終えて思わず首をかしげる。 「仔細はわかった。だが一体どういうことだ? 吾と光神は無二の親友。争いなど起きようはずもない」 「私もそう思います。ですが、この度の調和者の言葉といい……」 ノクトの言うとおりである。 アウロラの幻視と調和者の言葉。 偶然にしては辻褄があいすぎている。 ここは念の為、出城の人員を増やして護りを固めてはどうか。 意を決したノクトがそう切り出そうとした、まさにその時だった。 ばたばたというけたたましい足音と共に、数名の武人がなだれ込むように執務室へと駆け込んできた。 「何事だ?」 気分を害するでもなく、べヌスはそ